がん患者に対して提供できるピア・サポート体制の都道府県調査 結果の公表(速報)
厚生労働省委託事業「がん総合相談に携わる者に対する研修事業」では、2025年6月16日から7月23日にかけて、各都道府県を対象に「がん患者に対して提供できるピア・サポート体制に関する調査」を実施しました。まずは一次集計結果を取りまとめましたので、公表いたします。 本調査の実施にあたり、格別のご理解とご協力を賜りましたことをここに厚く御礼申し上げます。
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調査目的と概要
各都道府県におけるがんのピア・サポーターに対する研修の実施の有無、行政と医療機関の協力体制に関する現状を把握することを目的に実施しました。
【概要】
●調査方法:自記式アンケート調査
●調査実施期間:2025年6月16日~7月23日
●調査対象自治体数:全都道府県
●回答数:47 (回収率100%)
結果の要旨
ピア・サポーター養成研修会、フォローアップ研修会の取り組み
♢ ピア・サポーター養成研修会が定期的または不定期に開催されているのは40都道府県、フォローアップ研修を定期的または不定期に開催しているのは、36都道府県であった。
♢ ピア・サポーター養成研修会、フォローアップ研修会の運営は、主に「都道府県」「都道府県が委託する拠点病院や患者団体、機関等」「地域統括相談支援センター」が担っていた。
♢ 研修実施における課題として、「研修会を準備する担当部署・組織のマンパワーが十分ではない」「講師・ファシリテーター等の研修協力者の確保が難しい」「多様な背景を持った受講者が集まりにくい」が多く挙げられた。
♢ 研修実施における拠点病院等との連携について、「拠点病院等から研修の講師・ファシリテーターの協力を得ている」「拠点病院等のピア・サポート活動や患者サロンの担当者等が研修会に参加もしくは見学している」が多く挙げられた。
ピア・サポーターの登録、活動について
♢ ピア・サポーター養成研修会をこれまでに実施したことがある43都道府県のうち、ピア・サポーターの登録制度を取っているのは34都道府県だった。
♢ 養成したピア・サポーターをがん診療連携拠点病院等に派遣するなどのマネジメントを行っているのは28都道府県だった。活動の調整方法として「登録管理者が登録されたピア・サポーターと活動先を調整し、派遣する」方法をとっているところが最も多かった。
♢ 登録されたピア・サポーターの活動の把握や、質の担保・燃え尽き防止のためのために行っている取り組みをとして、「ピア・サポート活動後、ピア・サポーターや活動先の拠点病院等から活動報告を提出してもらう」「ピア・サポート活動後、その都度ピア・サポーター同士や活動先の担当者が活動の振り返りを行っている」「ピア・サポーター同士が交流する機会がある」が多く挙げられた。
♢ ピア・サポーターの活動に関して、がん診療連携協議会の相談支援部会等(以下部会)との連携として、「都道府県がん診療連携拠点病院が、ピア・サポート活動を都道府県内で進めるためのリーダーシップを取っている」「地域がん診療連携拠点病院がピア・サポート活動に主体的に参画している」が多く挙げられた。一方「これらの取り組みは行っていない」と回答した都道府県は14都道府県あった。
♢ 都道府県や委託先団体等が、拠点病院等でピア・サポート活動を普及するために行っている支援や取り組みについて、「ピア・サポーターの活動先の拠点病院等の担当者と協力関係を構築している」が最も多く挙げられた。
♢ ピア・サポーターの金銭面のサポートについて、報償は12都道府県、旅費は19都道府県で、都道府県・委託する団体、がん診療連携拠点病院等から支払われていた。ボランティア保険は17都道府県が加入していた。
まとめ
● 各都道府県は、がん診療連携拠点病院等におけるピア・サポートの活動を推進するために、研修プログラムに沿ってピア・サポーターを養成すると共に、その活動を継続するための教育体制や研修修了者を活用するマネジメント体制を併せて整備することが重要です。
● ピア・サポートの養成・活用には、行政と医療機関との密な連携が不可欠です。都道府県がん診療連携協議会のもとに、ピア・サポーターの養成・活用計画を策定し実施するための協議体を設置します。新たな組織を設置すること、または都道府県がん診療連携協議会の相談支援部会や緩和ケア部会など既存の枠組みに役割を位置付けることでもよいと考えます。なお、ピア・サポーター等が参画することが望ましいです。
● ピア・サポート活動を推進するために、研修プログラムに沿った研修を実施すると共に、その後の継続的な研修を行う教育体制や、研修修了者を活用するマネジメント体制をもつ出口戦略が重要です。この体制をつくる上で、ピア・サポートの教育研修やマネジメントを担当する専属の者を置くことが望ましいです。健康対策推進事業にある地域統括相談支援センターを活用することが、一つの解決策になりうると考えます。
● 都道府県がん診療連携拠点病院等は、ピア・サポート活動の意義を理解し、都道府県や他の拠点病院等と協力して計画を立て、ピア・サポーター活動を積極的に活用することが求められます。
この件に関する問い合わせ先
厚生労働省委託事業「がん総合相談に携わる者に対する研修事業」事務局
(受託:一般社団法人日本サイコオンコロジー学会)
メールアドレス: info★peer-spt.org(★を@にして送信してください)